後遺障害認定はなぜ厳しい?非該当になる理由と認定率を上げる対策を解説

交通事故の被害に遭い、体に痛みが残っているにもかかわらず「後遺障害認定は厳しい」という現実に不安を感じていませんか。せっかく申請をしても、適切な準備ができていなければ、「非該当」という通知が届くのがこの制度の実態です。

後遺障害認定が厳しいのは、本人の主観的な痛みよりも、画像検査や神経学的所見といった客観的な証拠を最重視する厳格な審査基準があるためです。特にむちうちなどの目に見えにくい怪我では、わずかな書類の不備や通院実績の不足が不利な判断につながり、適切な等級認定を受けられないケースが後を絶ちません。

この記事では、後遺障害認定が厳しいと言われる具体的な理由や、非該当になりやすい人の共通点を徹底的に解説します。認定率を向上させるための検査の受け方や、納得のいく賠償金を得るための対策を網羅しました。最後まで読むことで、厳しい審査を突破し、適切な認定を受けるための今後取るべき対応が整理しやすくなります。

※「むちうち」という言葉について
このコラムでは、皆様にとって馴染み深く、わかりやすい「むちうち」という言葉を使用して解説を進めますが、これは正式な病名ではなく、あくまで一般的な呼び名(俗語)です。
医療機関における正式な診断名は、「外傷性頚部症候群」です。

 

後遺障害認定は本当に厳しい?

後遺障害認定の実務的な基準は公開されておらず、後遺障害認定実務に関してはブラックボックスとなっています。しかし、後遺障害認定のハードルは極めて高く設定されているのです。損害保険料率算出機構が公表しているデータや、目に見えない怪我の代表格である「むちうち」の現状を確認すると、多くの申請者が「非該当」という現実に直面していることがわかります。審査が厳格化されている理由を含め、認定の厳しさの正体を項目ごとに見ていきましょう。

後遺障害等級の認定率は約4〜5%と低い

交通事故に遭った被害者のうち、実際の後遺障害等級の認定率は決して高いとは言えません。重い後遺障害から軽い後遺障害まですべて合わせて認定率は約5%なのです。毎年発生する膨大な事故件数に対し、認定を勝ち取れる人はごくわずかであり、残りの約95%は認定を受けられないまま示談交渉へ進むことになります。

この認定率の低さは、審査基準が「日常生活の不便さ」ではなく「医学的な他覚的な証明」に置かれているために起こります。被害者がどれほど生活に支障をきたしていても、医師の診断書や検査結果が認定基準に少しでも届かなければ、認定基準を満たさないと判断されます。

関連記事:後遺障害が認定されない理由とは?認定されなかったときの対処法も解説

むちうちの後遺障害認定は特に厳しい

むちうちによる後遺障害認定は、他の怪我と比較しても突出して困難です。むちうちは骨折や靱帯断裂とは異なり、レントゲンやMRIを撮影しても「異常なし」と診断されるケースが多く、目に見える証拠を残しにくいためです。

審査側は、画像で異常が確認できない場合、通院実績や事故の衝撃度から症状の真実性を推測することもあるようですし、通院回数が少なかったり、事故から受診までに数日の空白があったりするだけで、症状との関連性が認められにくくなることもあるようです。自覚症状を裏付ける客観的な検査結果が不足していることも、むちうちの認定を遠ざける大きな要因となります。

なぜ後遺障害認定は厳しく審査されるのか

後遺障害認定が厳格におこなわれるのは、支払われる賠償金額が認定の有無によって数百万円から数千万円単位で変動するためです。多額の保険金が動く制度である以上、不正受給や過剰な支払いを防ぐための厳格な審査体制として、極めて慎重な審査が必要とされています。

また、審査を担う損害保険料率算出機構は、中立な立場で書面審査のみをおこないます。被害者と直接対面して痛みの様子を確認することはありません。提出された書類の中に、交通事故と症状の因果関係を疑わせる要素が一つでもある場合、審査側は慎重な審査姿勢する方針を徹底するのです。保険制度の公平性と健全性を維持しようとする組織の姿勢が、結果として被害者にとっての「厳しさ」として表れています。

後遺障害認定で「非該当」になりやすい理由

後遺障害認定で非該当の結果が出る背景には、書類の不備や医学的根拠の不足といった明確な原因が存在します。審査側が重視しているだろうポイントを外してしまうと、どれだけ体に痛みが残っていても等級は認められません。弊社の実務経験から、非該当になりやすい主なケースは以下の通りです。

  • 症状が一貫性して持続していないため、残存した障害と事故との因果関係がはっきりしない
  • 医学的・他覚的な所見が不足している
  • 通院頻度が少ない、治療期間が短い
  • 事故の規模が小さい
  • 後遺障害診断書に必要なことが記載されていない

1つずつ確認しましょう。

症状が一貫性して持続していないため残存した障害と事故との因果関係がはっきりしない

事故後1週間や1ヵ月などの経過で頚部痛などの症状が出現する場合は、事故後から症状が一貫して持続していないと判断され、残存した頚部痛などの傷害と事故との因果関係がないと認定される可能性が高くなってしまいます。

また、寒いときや天気の悪いときだけ頚部痛が出現するというケースも症状に一貫性がないと判断されるので気を付けましょう。

外傷性頚部症候群、むちうちでは、事故後数日して頚部痛など症状が出現することは多くあるとされています。しかし、むちうちでは外傷後6時間以内に65%、24時間以内に93%、72時間以内に100%の患者に頚部痛が出現するという医学的な報告があります。

事故後3日前後で症状が出現しているのであれば、症状が一貫していると判断される可能性は高まるのです。

関連記事:むちうちの症状が出るまでの期間は?遅れて出る理由と早期対応の重要性

医学的・他覚的な所見が不足している

レントゲン、CTやMRIの画像検査の異常所見やスパーリングテストやジャクソンテストや腱反射などの神経学的異常所見などの他覚的所見が認められない場合、後遺障害等級が認定されない可能性が高くなります。この点は医学的にも納得できる部分です。

しかし、前述した通り、むちうちにおいては、画像検査や神経学的所見などの異常所見が認められないことが多いです。たとえ異常所見が無かったとしても、頚椎MRI検査などの精密検査を受けている場合は、頚部痛などの症状が重かったと判断され、後遺障害の認定がされやすくなる可能性があると推測されます。

医学的に証明していくためにも、可能なら早めにレントゲン検査だけでなく、MRIの検査を受けられるように主治医と相談していきましょう。画像診断による客観的な証拠がない場合、後遺障害の認定が難しくなる傾向があります。審査機関は「医学的な他覚所見」を最重視しており、本人の訴えだけでは障害の存在を認めない傾向があるためです。骨折や神経の圧迫がMRIやレントゲン画像で確認できないと、症状の根拠が乏しいと判断されます。痛みがあるにもかかわらず画像検査を受けていない状況は、非該当となる要因の一つです。

治療期間が短い、通院頻度が少ない

むちうち、外傷性頚部症候群においては、治療期間が2〜3ヵ月と短かったり、1ヵ月に1回程度など通院頻度が少なかったりする場合は後遺障害が認定されにくくなるのです。この点は症状が軽い方でも頻繁に通院される方もいらっしゃいますので、医学的には納得できない部分ではあります。

交通事故の後遺障害の認定は紙ベースの資料を基準におこない、実際の交通事故被害者(患者)と面談したりせずにおこなうため、通院期間や通院頻度で症状の程度を判定しているのだと推察されます。

弊社の実績を考慮すると、治療期間はむちうち、外傷性頚部症候群においては、通院期間は6〜7ヵ月以上、通院頻度は週1回程度以上で認定される可能性が高くなっているので、このことは知っておいてよいでしょう。

事故の規模が小さい

事故後の車両の損傷状況から交通事故の規模が小さいと判断された場合、物損事故として処理された場合は、交通事故から受けた身体への外傷が小さいため後遺障害も小さいと判断されたために、後遺障害が認定されるない可能性があります。

しかし、医学的には停車中の追突など無意識下での外傷では軽微な外力で症状を発症しやすいとされています。この点も交通事故の後遺障害の認定は紙ベースの資料を基準におこなっているためと推察されますが、医学的には不可解な部分です。

後遺障害診断書に必要なことが記載されていない

後遺障害等級の認定において最も重要な書類が、後遺障害診断書になります。しかし、医師も実は後遺障害診断書の適正な書き方を教わってはいないのです。このような背景から、医師によって後遺障害診断書の書き方は異なり、後遺障害認定に必要な内容が記載されないということが起こりえます。

後遺障害診断書を作成する際に、現在の自分の症状をしっかりと伝えて主治医にしっかり記載してもらう必要があるでしょう。後遺障害診断書に症状が記載されていないと、一貫して症状が持続していないと判断されてしまうリスクがあるかもしれません。

そのため、レントゲンやCT、MRIの画像検査の異常所見やスパーリングテスト、ジャクソンテスト、腱反射などの神経学的異常所見といった他覚的所見がある場合は、その内容を記載してもらいましょう。

また関節可動域の制限がある場合は、健側と患側の両方の可動域を必ず自動運動と他動運動で測定してもらい、記載してもらいましょう。

後遺障害診断書は後遺障害認定においてとても重要な書類になりますので、主治医と作成前によく相談しておく必要があります。

後遺障害認定を受けやすくするためのポイント

後遺障害認定の可能性を高めるためには、事故直後からの適切な行動と医学的証拠の積み重ねが不可欠です。審査側に残存した症状を後遺障害として認めてもらうための準備として、以下の項目を徹底する必要があります。

  • 事故後すぐに整形外科を受診する
  • 医師の指示に従って継続的に通院する
  • MRI・神経学的検査を適切に受ける
  • 症状を具体的かつ一貫して伝える
  • 後遺障害診断書を丁寧に作成してもらう
  • 被害者請求を活用する

1つずつ確認しましょう。

事故後すぐに整形外科を受診する

事故発生から間を置かずに整形外科を受診することは、認定を得るための重要なポイントです。事故から初診までの期間が空くと、痛みと事故の因果関係を証明することが医学的に困難になるためです。

前述したとおり、むちうちでは外傷後6時間以内に65%、24時間以内に93%、72時間以内に100%の患者に頚部痛が出現するとされています。当日に目立った自覚症状がなくても、数日以内に医師の診察を受け、診断書を作成してもらうことが必要です。早期の受診記録は、その症状が間違いなく事故によって発生したものであるという公的な証明になります。

医師の指示に従って継続的に通院する

完治または症状固定と判断されるまで、継続的に通院を続ける必要があります。治療の空白期間を作らずに継続して通院する実績が、客観的な裏付けになっていると認定側に判断されるためです。自己判断で通院を中断したり、通院の間隔を1ヵ月以上空けたりすると、症状が改善したとみなされます。一貫した通院実績は、後遺障害の存在を立証するための重要な根拠として扱われます。

MRI・神経学的検査を適切に受ける

残存した症状を他覚的に証明するために、精密な検査を積極的に受けることが重要です。画像診断で異常が見つからない場合でも、神経学的所見に異常があれば、障害の存在を他覚的に判断できるためです。MRI検査で神経の圧迫を確認するほか、腱反射テストや徒手筋力テストなどを医師に依頼し、客観的な検査結果を記録に残す必要があり

ます。これらのきゃかん的な検査結果は、審査において信頼性の高い証拠となりえます。

症状を具体的かつ一貫して伝える

診察のたびに、自身の症状を正確かつ一貫性を持って医師に報告してください。部位や症状が二転三転すると、カルテの記録に矛盾が生じ、後遺障害の信用性が損なわれるためです。「雨の日だけ痛む」といった限定的な表現ではなく、「常に痛みがある」といった常時性を具体的に一貫して伝える必要があります。事故直後から症状固定まで変わらない症状を訴え続けることで、認定されやすくなる可能性があります。

後遺障害診断書を丁寧に作成してもらう

等級認定の要となる後遺障害診断書を、不足なく詳細に記載してもらう必要があります。この書類に記載されていない症状は、審査の対象から完全に除外されてしまうためです。医師に対して、現在の自覚症状を一貫して明確に伝え、画像検査や神経学的所見などの他覚所見をすべて記載してもらうよう依頼してください。内容に不備がないか、提出前に自分自身でも確認するとなおよいです。

被害者請求を活用する

加害者側の保険会社に任せるのではなく、被害者自身が直接申請をおこなう「被害者請求」を選択してください。自ら書類を揃えることで、認定に有利となる追加の資料や医師の意見書を自由に添付できるためです。手続きの透明性が確保され、どのような資料が審査に回ったかを完全に把握できるようになります。納得のいく証拠を最大限に提出できる仕組みを利用することが、厳しい審査を突破する有効な手段となります。

後遺障害認定が非該当だった場合の対処法

一度「非該当」と判断されても、その決定を覆すための手続きが法的に認められています。審査結果に対して納得がいかない場合は、不足していた要素を補完し、再審査を求めることが可能です。具体的な対処法として、以下の手段が挙げられます。

  • 異議申し立てをおこなう
  • 紛争処理制度を利用する
  • 裁判所へ訴訟を提起する
  • 医師による医学的情報を強化する

1つずつ確認しましょう。

異議申し立てをおこなう

異議申し立て書を作成した上で、後遺障害等級認定の申請をおこなった自賠責保険会社へ異議申し立て書を送付することで異議申し立ては完了します。

異議申し立て自体は何度でもおこなえますが、客観的な新しい証拠を出すことができなければ、非該当の結論が変わる可能性はかなり低いです。

異議申し立てをした事案で、自賠責保険審査会という専門部会で専門的な審査を受けた件数は2022年度は10,353件で、その結果認定された等級が変更となったのは1,111件であったいうデータがあり、異議申し立てにおける後遺障害認定率は10%程度となっているのです。

異議申し立てをする場合は、追加で画像検査を受けるなど新たな医学的な証拠提出することも検討し、慎重に進めていくことが大切になります。

紛争処理制度を利用する

裁判所へ訴訟を提起し、裁判官に後遺障害の有無を判断してもらう方法があります。

裁判所では裁判官が独自に後遺障害について判断しますが、裁判官によっては自賠責損害調査事務所の判断を踏襲する傾向にある裁判官も存在するようです。

交通事故の後遺障害の経験が豊富な弁護士の先生と相談しながら、提出する証拠を吟味しましょう。

医師による医学的情報を強化する

異議申し立て、紛争処理制度の利用、裁判所への訴訟提起のいずれの手段をとったとしても、後遺障害等級認定がなされる新たな医学的な証拠が必要となってきます。

専門医による医学意見書は、画像検査や神経学的所見などの異常所見の有無に関する医学的な評価や医学的根拠の補強につながる医学文献や解説が記載されており、臨床経験に基づいた具体的な意見を記載することにより医学的な情報を強化することが可能です。

医学意見書を新たな証拠として追加することも検討してみてください。

関連記事:交通事故の後遺障害における医学意見書の役割やメリットとは

後遺障害認定の結果で慰謝料・賠償金はどれくらい変わる?

後遺障害が認定されるかどうかで、受け取れる賠償金の総額は数百万円から数千万円単位で変動します。認定が得られない「非該当」の場合、後遺障害を前提とした賠償金が一切支払われないためです。等級ごとに設定されている主な賠償項目と、認定による金額の変化について解説します。

  • 後遺障害慰謝料が追加される
  • 後遺障害逸失利益を請求できる
  • 等級が1つ上がるだけで賠償額が大きく増える
  • 弁護士基準の適用でさらに増額する

1つずつ確認しましょう。

後遺障害慰謝料が追加される

後遺障害等級が認定されると、入通院慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」が支払われます。これは後遺症が残ったことによる精神的苦痛を補償するもので、認定が得られない限り1円も支払われません。最も低い14級であっても、弁護士基準(裁判基準)では110万円程度が目安となります。認定の有無は、慰謝料という名目の受領額がゼロか100万円以上かを分ける決定的な境界線となります。

後遺障害逸失利益を請求できる

認定を受ける最大のメリットは、将来得られるはずだった収入の減少分を補填する「逸失利益」を請求できる点にあります。後遺症によって労働能力が低下したとみなされるため、年収や年齢、等級に応じた喪失率を掛け合わせて算出された多額の賠償金が支払われます。非該当の場合は「労働能力に影響はない」と判断されるため、この項目は原則として認められません。逸失利益は賠償金全体の大部分を占めることが多く、認定の有無が最終的な受取額を大きく左右します。

等級が1つ上がるだけで賠償額が大きく増える

後遺障害等級は1級から14級まで分かれており、数字が小さくなるほど重度とされ、賠償額も飛躍的に上昇します。例えば、むちうちで認定される可能性がある14級と12級では、慰謝料だけで約180万円の差が生じ、逸失利益を含めると数百万円の差が開くことも珍しくありません。わずかな症状の差であっても、認定される等級が1つ異なるだけで、被害者が受け取る経済的な救済内容は劇的に変化します。

弁護士基準の適用でさらに増額する

等級認定を受けた上で弁護士が交渉に介入すると、最も高額な「弁護士基準」での請求が可能になります。保険会社が自社基準で提示する金額は、弁護士基準と比較して半分から3分の1程度に抑えられているケースが大半です。適切な等級認定を獲得し、さらに基準そのものを引き上げることで、最終的な賠償額は非該当の場合や保険会社提示額と比べて大きな差となります。認定を勝ち取ることが、正当な対価を受け取るための強固な基盤となります。

後遺障害認定に強い弁護士へ相談するメリット

審査基準が極めて厳しい後遺障害認定において、専門的な知識を持つ弁護士のサポートを受けることは非常に有効です。弁護士は医学的根拠の補強や手続きの代行を通じて、被害者が正当な等級を獲得できるよう多角的に支援します。具体的なメリットは以下の通りです。

  • 診断書や検査資料のチェックを受けられる
  • 異議申し立ての成功率向上が期待できる
  • 弁護士費用特約が使えるケースもある

1つずつ確認しましょう。

診断書や検査資料のチェックを受けられる

弁護士は、医師が作成した診断書や検査結果の内容が認定基準を満たしているかを精査します。医師は治療の専門家であっても、後遺障害認定の細かな審査基準に精通しているとは限らないため、記載漏れや表現の不足が生じることがあるからです。認定に有利な具体的な症状の書き方や、追加で実施すべき検査(MRI検査や神経学的検査など)をアドバイスすることで、書類の不備による非該当を未然に防ぎます。

異議申し立ての成功率向上が期待できる

一度「非該当」とされた結果を覆すには、審査側が納得する論理的な反論と強力な新証拠が必要であり、弁護士の介入が成功の可能性を高めます。弁護士は過去の認定事例や裁判例を分析し、なぜ前回の申請が退けられたのかを特定した上で、説得力のある異議申し立て書を作成します。医療機関との連携により、不足していた医学的所見を補う意見書を確保するなど、専門家ならではの戦略で再審査に臨めます。

弁護士費用特約が使えるケースもある

自身の加入している自動車保険などに「弁護士費用特約」が付帯されていれば、自己負担を抑えて専門家の支援を受けられます。この特約を利用すると、相談料や着手金、報酬金などの費用を保険会社が上限額(一般的に300万円まで)まで負担してくれるためです。費用の心配をすることなく、後遺障害認定に精通した弁護士に依頼できる環境が整います。特約の有無を確認し活用することは、認定という厳しい壁を突破するための賢い選択となります。

後遺障害認定に関するよくある質問

後遺障害認定の手続きを進める上で、多くの被害者が共通して抱く疑問があります。審査の期間や通院のあり方、認定が受けられなかった際の対応など、あらかじめ把握しておくべき重要なポイントをまとめました。

  • 後遺障害認定にはどれくらい時間がかかる?
  • 通院期間はどのくらい必要?
  • 接骨院だけの通院でも認定される?
  • 異議申し立ては何回でもできる?

1つずつ確認しましょう。

後遺障害認定にはどれくらい時間がかかる?

申請書類が損害保険料率算出機構に受理されてから、結果が出るまでには通常2ヵ月から3ヵ月程度の期間を要します。提出された膨大な診断書や画像資料を、専門の調査員や医師が慎重に審査するためです。ただし、高次脳機能障害などの複雑な事案や、追加の照会が必要なケースでは半年以上の時間がかかる場合もあります。審査状況によっては、想定よりも回答まで待機が必要になることを理解しておく必要があります。

通院期間はどのくらい必要?

前述した通り、認定基準は非公表であり、明確な通院期間は明らかではありません。弊社の実績や交通事故を多く扱う弁護士の先生の意見を考慮すると、治療期間はむちうち、外傷性頚部症候群においては、通院期間は6〜7ヵ月以上、通院頻度は週1回程度以上で認定される可能性が高くなっているようです。治療を尽くしても症状が改善しなかったということを他覚的に示すためにも、一定程度の通院期間を確保することが求められます。

接骨院だけの通院でも認定される?

接骨院や整骨院のみの通院では、後遺障害等級の認定上不利になる傾向があるのです。後遺障害認定の審査で重要視されていると予想されるのは、「医師」が作成した後遺障害診断書や医学的な検査結果であり、柔道整復師は医師ではないため、法的・医学的な診断書を作成することができないからです。接骨院での施術を希望する場合であっても、必ず整形外科などの医療機関への定期的な受診を継続しなければなりません。病院での受診記録がない期間は、審査において「治療を受けていない期間」とみなされるリスクがあります。

異議申し立ては何回でもできる?

自賠責保険に対する異議申し立てに、回数の制限は設けられていません。一度異議申し立てが棄却されたとしても、新たな医学的証拠や論理的な反論資料を準備できれば、何度でも再申請をおこなうことが可能です。ただし、回数を重ねるだけで内容が前回と同様であれば、結論が覆ることはありません。非該当の理由を詳細に分析し、不足していた証拠を的確に補完した上で、戦略的に申請を繰り返す姿勢が重要です。

まとめ

後遺障害認定は、交通事故の被害者が正当な賠償金を受け取るための極めて重要な手続きですが、その審査基準は想像以上に厳格です。単に「痛みがある」という訴えだけでは通用せず、医学的な裏付けや一貫した通院実績がなければ、容易に「非該当」と判断されてしまいます。

厳しい審査を突破し認定率を上げるためには、事故直後から整形外科で適切な検査を受け、医師の指示の下で症状固定と診断されるまで通院治療を続けることが欠かせません。また、提出する後遺障害診断書に医師に記載してもらう内容をあらかじめ検討し、必要に応じて「被害者請求」や「弁護士への相談」を活用する戦略的な視点も必要です。

もし非該当の結果が出たとしても、異議申し立てなどの対抗手段は残されています。この記事で紹介したポイントを一つずつ確認し、客観的な証拠を積み重ねることで、後遺症に見合った正当な等級認定の獲得を目指してください。

白井康裕

このコラムの著者

白井 康裕

【経歴・資格】
・日本専門医機構認定 整形外科専門医
・日本職業災害医学会認定 労災補償指導医
・日本リハビリテーション医学会 認定臨床医
・身体障害者福祉法 指定医
・医学博士
・日本整形外科学会 認定リウマチ医
・日本整形外科学会 認定スポーツ医

2005年 名古屋市立大学医学部卒業。
合同会社ホワイトメディカルコンサルティング 代表社員。
医療鑑定・医療コンサルティング会社である合同会社ホワイトメディカルコンサルティングを運営して弁護士の医学的な業務をサポートしている。

【専門分野】
整形外科領域の画像診断、小児整形外科、下肢関節疾患