後遺障害の異議申し立てで失敗しないポイントと失敗時の対処法

異議申し立て失敗しないPOINT

交通事故のケガで後遺症が残ったものの、納得のいく後遺障害等級が認められず「非該当」と判定される場合があります。一度下された認定結果に不満がある場合、「異議申し立て」という手続きをおこない再審査を求めることが可能です。

しかし、異議申し立ての成功率は約10%と非常に厳しく、前回の申請と同じ資料で再申請しても、結果は失敗に終わるのが現実です。

そこでこの記事では、異議申し立ての基本的な流れや成功率、失敗しないための4つの重要ポイントから、万が一失敗した際の対処法まで詳しく解説します。

後遺障害の異議申し立てで正当な等級を獲得するために、ぜひ最後までご覧ください。

1.「後遺障害の異議申し立て」とは何か

後遺障害の異議申し立てとは、一度下された後遺障害等級の認定結果に納得がいかない場合に、もう一度正しい審査を求める手続きです。

交通事故のケガで体に痛みが残った際、最初の申請で希望通りの等級が得られなかったり、「非該当」と判断されたりするケースは少なくありません。そうした不満や納得のいかない結果を解消し、国や専門機関に正当な等級へと認め直してもらうための仕組みがこの制度です。

異議申し立てを成功させるには、まず「本来どのように認定されるのか」という全体像と、「納得いかない結果になったときの仕組み」を正しく把握しておく必要があります。以下で詳しく確認していきましょう。

1-1.後遺障害等級認定の流れ

後遺障害等級認定は、以下の4つのステップで進みます。

「症状固定(しょうじょうこてい)」の診断を受ける これ以上治療しても症状が改善しないと医師が判断した状態を「症状固定」と呼びます。

後遺障害等級認定を申請するスタート地点となります。

「後遺障害診断書」を医師に書いてもらう 症状固定と診断されたら、主治医に専用の診断書作成を依頼し、体に残る痛みやしびれなどの具体的な症状を記載してもらいます。
申請手続きをおこない、書類を提出する 申請方法には、相手の保険会社に手続きを丸ごと任せる「事前認定(じぜんにんてい)」と、被害者本人が自分で書類を準備して進める「被害者請求(ひがいしゃせいきゅう)」の2つの方法があります。

どちらかを選んで、必要書類や検査データを提出します。

専門機関が審査をおこない、等級が決定する 専門機関が診断書や画像データをもとに審査します。

審査が完了すると、適切な等級(1〜14級、または非該当)が確定します。


審査完了後、通知された等級結果に納得ができれば、そのまま示談交渉へと進みます。

しかし、書類の不足などが原因で、本来認められるべき等級より低く判定されたり、「非該当」と判断されたりするケースも存在します。そのような納得のいかない結果を正し、正しい認定を得るための解決策が「異議申し立て」です。

1-2.非該当になった・認定された等級に納得がいかない場合の手段が「異議申し立て」

最初の後遺障害等級認定で非該当になったり、通知された等級に納得がいかなかったりしたときの解決手段が、「異議申し立て」です。

異議申し立ての手続きに回数制限はなく、納得する結果が得られるまで何度でもおこなえます。ただし、最初に提出した書類と同じ内容で何度申請をしても、結果をくつがえすのは難しいです。

非該当や低い等級になった理由を細かく分析して、新しい画像データや医師の意見書といった医学的な新しい証拠を付け足して再申請する工夫が求められます。

2.後遺障害の異議申し立ての成功率

後遺障害の異議申し立てを検討する際、まず理解しておきたいのが「どれくらいの確率で結果が覆るのか」という現実です。結論から言うと、一度決定された認定結果を再審査で変えることは決して容易ではありません。

ここでは、異議申し立てにおける実際の成功率と、多くの申請が失敗に終わってしまう具体的な理由について詳しく解説します。

2-1.後遺障害の異議申し立てが失敗する確率は高い

後遺障害の異議申し立てが失敗する(非該当のまま変わらない、等級が変わらない等)確率は、全体の約90%と非常に高く、ほとんどの人が最初の結果から変わらないまま終わります。

実際に損害保険料率算出機構が公開している「2025年度_自動車保険の概況」には、「異議申し立ての審査件数」が10,601件に対し、「等級変更あり」は1,063件と記載されています。ちょうど全体の10%程度のみしか成功していないという計算です。

引用:損害保険料率算出機構「2025年度_自動車保険の概況」内 図9

審査をおこなう機関は、最初の申請段階で提出された書類をすでにとても細かくチェックしたうえで、正しい判断を下しています。そのため、ただ単に「判定結果に納得がいかない」と不満を伝えるだけでは、判断が変わるのを期待するのは難しいのが現実です。

2-2.後遺障害の異議申し立てが失敗する理由・原因

後遺障害の異議申し立てが失敗する主な理由は、最初の審査で足りなかった具体的な医学的証拠を新しく提出できていないからです。

多くの事故被害者は、前回と同じ診断書や、ただ不満だけを書いた書類だけで再申請をおこなってしまいます。しかし、審査をする機関は提出された書類に書かれている医学的な根拠だけを見て公平に判断するため、新しい検査結果や画像データがないと結果は変えられません。

また、主治医が書いた後遺障害診断書の書き方が、後遺障害の認定基準にうまく合っていないのも大きな原因です。

2-3.なぜ「むちうち(14級・12級)」の異議申し立てはとくに厳しいのか

異議申し立ての中でも、むちうち(外傷性頚部症候群)は特に審査が厳しいとされています。むちうち(外傷性頚部症候群)は、痛みやしびれといった症状が他人の目に見えにくく、客観的な証明が難しいためです。

むちうち(外傷性頚部症候群)で12級や14級の認定を目指す場合、MRI画像データで神経の圧迫などが確認できる必要があります。しかし、画像に異常が写らないケースも多く、本人の自覚症状だけでは審査を通すのが困難です。

そのため、医師による客観的な検査結果や詳細な意見書がないと、再審査でも認められません。

関連記事:むちうちはレントゲンでわかる?「異常なし」といわれたときの対処法

※「むちうち」という言葉について
「むちうち」という言葉は正式な病名ではなく、あくまで一般的な呼び名(俗語)です。
医療機関における正式な診断名は、「外傷性頚部症候群」となります。

3.後遺障害の異議申し立てで失敗しないためのポイント4選

後遺障害の異議申し立てで失敗しないためには、以下の4点を意識して審査に望むことが大切です。

  • 初回で「なぜ不認定・低等級だったのか」の理由を分析する
  • 新たな医証を必ず用意する
  • 主治医以外の専門医による「医学意見書」「画像鑑定」を活用する
  • 交通事故・医療問題に強い弁護士に依頼する

詳しく解説します。

3-1.初回で「なぜ不認定・低等級だったのか」の理由を分析する

異議申し立てを成功させるために、最初の審査で「なぜ不認定や低い等級になったのか」という理由の分析を最優先におこないましょう。

最初の不認定通知書には、不認定と判断された理由が簡単に記載されています。たとえば「他覚的な所見がない」と書かれている場合は、痛みを客観的に証明する画像や検査データが足りていない証拠です。

審査結果に対する理由を正しく理解することで、異議申し立て時にどのような書類を追加すればよいかが明確になります。

3-2.新たな医証を必ず用意する

異議申し立てをおこなうのであれば、前回の審査段階では提出していなかった、新しい医学的な証拠を必ず用意してください。事故後に新しく撮影したMRIなどの精密検査の画像データや追加でおこなった特別な神経伝導速度検査結果がこれにあたります。

痛みをただ痛いと訴えるだけでは審査に通ることは難しく、体の中に異常があることを証明できる客観的な根拠が必要です。

新たに有効な医証を用意することで、最初の審査結果が間違っていたこと証明できる可能性が高まります。

3-3.主治医以外の専門医による「医学意見書」「画像鑑定」を活用する

主治医以外の整形外科などの専門医が作成した「医学意見書」や「画像鑑定」を活用することで、異議申し立てを有利に進められるようになります。

普段の治療を担当している主治医が、後遺障害の等級認定に詳しくなかったり、書類の書き方を理解していなかったりするケースも考えられます。そこで、画像鑑定の専門医にレントゲンやMRIを詳細に読影してもらい、専門的な意見をまとめてもらう方法が効果的です。

専門医が書いた精度の高い意見書を添えて提出することで、審査をおこなう機関に対する説得力が高まります。

3-4.交通事故・医学的な問題に強い弁護士に依頼する

異議申し立てを成功させるためには、交通事故や医学的な問題への対応実績が豊富な弁護士に依頼するのを強くおすすめします。

被害者ご自身だけで高度な医学的証拠を集めたり、専門的な書類を作成したりするのは困難です。交通事故に詳しい弁護士に相談すれば、初回の審査で不認定となった原因を正確に分析し、必要な追加検査の手配や提携する医師への協力要請をスムーズに進めてくれます。

専門知識を持つ弁護士を味方につけることで、異議申し立てを有利に進められ、正当な等級認定へと大きく近づきます。

4.後遺障害の異議申し立てが失敗したらどうするか

後遺障害の異議申し立てが失敗した場合は、別の解決手段を検討して次のアクションに移ることが重要です。具体的には、以下3つの対応を進めてください。

  • 追加の医証を用意し再度の異議申し立てをおこなう
  • 「自賠責保険・共済紛争処理機構」へ調停を申請する
  • 訴訟を起こして裁判所の判断をあおぐ

一度異議申し立てが通らなくても、諦める必要はありません。ご自身の現状をもとに、弁護士と相談しながら最適な進め方を決定すると良いです。詳しく解説します。

4-1.追加の医証を用意し再度の異議申し立てをおこなう

再度の異議申し立てをおこなって結果をくつがえすためには、前回提出できなかった追加の医証を用意することが最優先です。ここでの医証とは、これまでにおこなっていない検査の画像データや、専門医が新しく作成した意見書などを指します。

前回の異議申し立てで審査機関が不認定とした理由を分析し、不足していることをピンポイントで埋める医証が必要です。徹底的に準備をおこない、説得力のある書類をそろえると、再度の異議申し立てでも成功する可能性が高まるでしょう。

4-2.「自賠責保険・共済紛争処理機構」へ調停を申請する

異議申し立てが失敗したときの次の手段として、自賠責保険・共済紛争処理機構へ調停の申請をおこなう方法があります。

自賠責保険・共済紛争処理機構は、自賠責保険の決定に関するトラブルを解決するために、法律や医学の専門家が集まって作られた中立な第三者機関です。これまでの審査結果が本当に正しかったのかどうかを、先入観のない全く新しい視点から厳しく審査して調停案を出してくれます。

ただし、調停の申請は一度しかおこなえないため、事前にしっかりと対策を考えてから臨まなければなりません。

4-3.訴訟を起こして裁判所の判断をあおぐ

異議申し立てでも解決しなかった場合の最終的な手段は、裁判所に訴訟を起こして法的な正しい判断をあおぐ方法(損害賠償請求訴訟)です。裁判では、自賠責保険の審査基準にとらわれず、提出されたすべての医学的証拠をもとに裁判官が個別に等級を判断します。

自賠責の審査では認められなかった症状が、裁判所の公平な目によって後遺障害として認められるケースは少なくないです。ただし、判決が出るまでに多くの時間や費用がかかるため、事前に成功の見込みがどれくらいあるかを弁護士とよく話し合う必要があります。

5.【弁護士の先生へ】後遺障害の異議申し立てで失敗しないために|弊社の医学サポートサービス

医学サポートサービス

弊社は、交通事故案件を得意とする医療鑑定・コンサルティング会社です。交通事故や弁護士の先生の抱える医学的な事案に精通した現役の整形外科専門医を中心とする医師ネットワークが、先生方の立証活動を強力に後押しする体制を整えています。

そして、後遺障害等級認定の申請や異議申し立てにおいては、以下3つのサービスを通じて弁護士の先生をサポートしております。

  • カルテ画像精査・画像鑑定
  • 医学意見書作成
  • 法律事務所・弁護士向けの顧問医サービス

以下に、それぞれのサービス概要をまとめましたのでぜひご覧ください。

5-1.カルテ画像精査・画像鑑定

弊社のカルテ画像精査・画像鑑定サービスでは、レントゲンやMRIなどの画像データを専門医が細かくチェックし、隠れた異常を見つけ出します。主治医が見落としがちな微小な骨折や靭帯や軟骨などの軟部組織損傷、神経の圧迫などを、整形外科の専門医が厳しく精査いたします。

画像鑑定をおこなうと、画像に写る明確なケガの証拠を指摘可能です。他覚的所見を求められる自賠責の審査に対して、極めて強い武器になります。

異議申し立てを成功へと導くために、他覚的な医学的所見の有無をはっきりさせる画像鑑定をご依頼いただくのが最も効果的です。

弊社のカルテ画像精査・画像鑑定については、「交通事故や医療過誤等のカルテ画像鑑定・精査」のページをご覧ください。

5-2.医学意見書作成

弊社の医学意見書作成では、現役の整形外科専門医が、医学的根拠を明確に示した説得力の高い書面を作成するサポートをおこなっております。医学意見書は顕名で作成し、作成した専門医の経歴書も添付します。自賠責保険の審査基準をしっかりと意識したうえで、因果関係や症状の連続性を医学的な視点から論理的に説明します。

裁判実務でも通用する高い品質の医学意見書を添えると、審査をおこなう機関に被害者の症状の重さを客観的に正しく伝えることが可能です。普段治療をおこなう主治医の後遺障害診断書だけでは足りない専門的な医学解説を補い、異議申し立ての成功率を格段に高めます。

弊社の医学意見書作成については、「交通事故や医療過誤等の医学意見書作成」のページをご覧ください。

5-3.法律事務所・弁護士向けの顧問医サービス

弊社の顧問医サービスは、交通事故や医療問題を多く扱う弁護士の先生方が、いつでも気軽に専門医へ相談できる環境をご提供するサービスです。日常の業務の中で、主治医との面談方法や主治医の気分を害さずに希望する後遺障害診断書の取得方法など医師でないとわからない疑問が生じた際、すぐに現役医師に質問をしていただけます。

顧問医サービスをご活用いただくことで、交通事故案件における事務所の対応力を強化し、依頼者様からの信頼をさらに深めることが可能です。医学的な判断に悩む弁護士の先生方の強力なパートナーとして、法律相談や示談交渉の段階から医師が迅速かつ丁寧にバックアップいたします。

弊社の法律事務所・弁護士向けの顧問医サービスについては、「顧問医サービス【法律事務所・弁護士向け】 」のページをご覧ください。

6.弊社の後遺障害の異議申し立てサポート事例

最後に、後遺障害の異議申し立てに対する弊社のサポート事例を3つご紹介します。

※具体的な画像や経過は患者の個人情報や秘密情報を含みますので提示は差し控えさせていただきます。具体的な経過が知りたい場合は、弊社へお問い合わせください。答えられる範囲でお答えします。

6-1.【外傷性頚部症候群で非該当だった事案】異議申し立てにより神経症状14級と認定

外傷性頚部症候群で非該当だった事案が、弊社で医学意見書を作成させていただいたことにより、神経症状14級と認定されました。

6-2.【頚椎椎間板ヘルニアで非該当だった事案】異議申し立てにより神経症状12級と認定

頚椎椎間板ヘルニアで非該当だった事案が、弊社で医学意見書を作成させていただいたことにより、神経症状12級と認定されました。

6-3.【膝の外傷で非該当だった事案】異議申し立てにより神経症状12級と認定

膝の外傷で非該当だった事案が、弊社で医学意見書を作成させていただいたことにより、半月板損傷が見つかり、神経症状12級と認定されました。

7.まとめ

後遺障害の異議申し立ては、成功率約10%という非常に高いハードルが存在します。最初の判定をくつがえすには、単に不満を訴えるのではなく、非該当や低い等級となった理由を正しく分析し、専門医による画像鑑定や医学意見書といった新たな「医学的証拠」を用意することが不可欠です。

一人で対応するのが難しい場合は、交通事故や医療問題に強い弁護士や弊社の医学サポートサービスを活用するのが確実な道となります。納得のいかない結果が出ても決して諦めず、適切な準備を整えて正当な後遺障害等級の獲得を目指しましょう。

合同会社ホワイトメディカルコンサルティングでは、後遺障害等級認定でご活用いただける専門的なサポートを提供しております。交通事故をはじめとする後遺障害案件において、医学的証拠が必要でお困りの弁護士の先生は、ぜひ弊社にご相談ください。

白井康裕

このコラムの著者

白井 康裕

【経歴・資格】
・日本専門医機構認定 整形外科専門医
・日本職業災害医学会認定 労災補償指導医
・日本リハビリテーション医学会 認定臨床医
・身体障害者福祉法 指定医
・医学博士
・日本整形外科学会 認定リウマチ医
・日本整形外科学会 認定スポーツ医

2005年 名古屋市立大学医学部卒業。
合同会社ホワイトメディカルコンサルティング 代表社員。
医療鑑定・医療コンサルティング会社である合同会社ホワイトメディカルコンサルティングを運営して弁護士の医学的な業務をサポートしている。

【専門分野】
整形外科領域の画像診断、小児整形外科、下肢関節疾患