軽いむちうち症状とは?軽度でも放置せずに治療を受けるべき理由

「軽い追突事故だったのに、首に違和感がある」「レントゲンでは異常なしと言われたけれど、本当に大丈夫なのか不安」そのような悩みを抱えていませんか?

軽いむちうちは、症状が目立たないからと放置すると、悪化したり後遺症が残ったりするリスクがあります。そこでこの記事では、軽いむちうちの症状に関する以下の内容について解説していきます。

  • むちうちの概要
  • 軽いむちうちの症状
  • 軽いむちうちは自分で治せるのか
  • むちうちの症状が軽くても放置してはいけない理由
  • 軽いむちうちの通院
  • 軽いむちうちの治療期間
  • 軽いむちうちの症状が長引く場合の対応

ご自身のむちうちの症状に不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。

※「むちうち」という言葉について
このコラムでは、皆様にとって馴染み深く、分かりやすい「むちうち」という言葉を使用して解説を進めますが、これは正式な病名ではなく、あくまで一般的な呼び名(俗語)です。
医療機関における正式な診断名は、「外傷性頚部症候群」となります。

1.むちうち(外傷性頚部症候群)とは?

むちうちとは、交通事故などで頚部に強い力が加わり、頚部の骨以外の軟部組織が傷つく状態のことです。「むちうち」は医学的な正式名称ではなく、一般的に使われている俗称であり、医療機関では「外傷性頚部症候群」や「頚椎捻挫」や「頚部挫傷」と診断されます。

追突事故のように後方から強い衝撃を受けたときに起こりやすく、レントゲン検査では骨折や脱臼がないのに、痛みや違和感が続くのが特徴です。症状の程度は人それぞれ異なり、軽いものから日常生活に支障が出るほど重いものまで幅広く存在します。

1-1.むちうちの症状

むちうちの症状は、首の痛みだけにとどまらず全身に及ぶのが特徴です。代表的な症状として、首や肩の痛みや違和感、可動域の制限などがあげられます。それに加えて、頭痛やめまい、吐き気といった自律神経に関わる症状が出るのも珍しくありません。

さらに、手や指先のしびれ、感覚の異常などがみられるケースもあります。

症状の組み合わせや強さには個人差が大きいです。首以外に不調を感じた場合もむちうちを疑い、早めに医療機関を受診することが大切です。

1-2.むちうちの原因

むちうちがおこる主な原因は、交通事故の追突などによって首へ急激な負荷がかかることです。後方や側方から車が衝突すると、頚部へもたらされるエネルギー転位により、加速-減速メカニズムが頚部に起こって、頚部が前屈・後屈を強制され、軟部組織損傷をもたらすことにより症状を発症するとされています。

交通事故以外にも、スポーツ中の衝突や転倒など、首に強い衝撃が加わる場面であれば、むちうちは誰にでも起こりうる外傷です。交通事故による衝撃が大きくても、それがかならずしも症状の強さと関連しないこともあります。

1-3.むちうちの症状が出るまでの期間

むちうちの症状が出るまでの期間は、6割強が6時間以内、9割が24時間以内に発症すると医学論文で報告されています。それゆえ、症状が現れる最も一般的なタイミングは、事故などに遭った当日中、とくに夕方から夜にかけて、またはその翌日です。

事故直後に痛みが出ないのは、事故の瞬間はノルアドレナリンの影響で興奮状態になり、痛みを感じにくくなっているのが理由の一つです。そのため、翌日になって痛みが強まる例も少なくありません。

医学的な報告では、受傷から72時間以内にほぼすべての患者にむちうちの症状が現れるとされています。事故後しばらくは体調の変化に注意を払うことが重要です。

関連記事:むちうちの症状が出るまでの期間は?遅れて出る理由と早期対応の重要性

2.軽いむちうち(外傷性頚部症候群)の症状

むちうちの症状

軽いむちうちの場合、以下のように日常生活に大きな支障が出にくい程度の不調が症状としてあらわれるのが一般的です。

  • 首や肩まわりの痛み・可動域の制限
  • 頭痛・めまい・吐き気などの自律神経症状
  • 手足のしびれ・感覚異常・脱力感

ご自身の状態に当てはまるものがあるか、確認してください。

2-1.首や肩まわりの痛み・可動域の制限

軽いむちうちの代表的な症状が、首や肩まわりの痛みと、首を動かせる範囲が狭くなる可動域の制限です。

頚部の軟部組織が損傷すると炎症が起こり、首を左右に振ったり上下に動かしたりする動作がしづらくなります。首が張って回らない、後ろを振り向くと痛みが走るといった訴えがよくみられます。

症状が軽いうちは我慢してしまいがちですが、無理に首を動かすと悪化するおそれがあります。痛みを感じたら安静を心がけ、早めに整形外科を受診しましょう。

2-2.頭痛・めまい・吐き気などの自律神経症状

痛みだけでなく、頭痛やめまい、吐き気といった自律神経に関わる症状が出る場合があります。首の後ろから頭部に広がる頚性頭痛は、三叉神経や後頭部神経が関係していると考えられます。

めまいや吐き気は頚部の交感神経の緊張亢進などが関係しているとされています。

これらの症状は首の痛みほど目立たないため見過ごされやすいですが、事故後に体調の変化を感じたら我慢せず医師に伝えましょう。

2-3.手足のしびれ・感覚異常・脱力感

軽いむちうちであっても、手や指先のしびれ、上肢に力が入りにくくなる筋力低下といった症状が出る場合があります。

むちうちでは、画像所見では異常が無いのにこれらの症状が出現することが特徴なのです。

これらの症状を放置すると、症状が進んだり、長引いたりする可能性も。しびれや脱力感を感じたら自己判断せず、早めに整形外科で検査を受けることをおすすめします。

3.軽いむちうち(外傷性頚部症候群)は自分で治せるのか

軽いむちうちは、自分で治すのが難しいです。痛みや違和感の感じ方には個人差があり、市販の湿布や安静だけで様子を見ても、実際に軟部組織がどの程度傷ついているかを自分で正確に判断するのは困難だからです。

とくに、事故直後は興奮状態にあり痛みを感じにくいため、症状の重さを見誤りやすい傾向があります。また、レントゲンやMRIを受けなければ、隠れた外傷性の異常所見の有無も分かりません。

まずは整形外科で医師の診察を受け、専門的な視点から症状の程度を確認してもらうと安心です。

4.むちうち(外傷性頚部症候群)の症状が軽くても放置してはいけない理由

放置していけない理由

むちうちの症状が軽くても、以下3つの理由から放置しないようにしてください。

  • 数日後に症状が出現・悪化するケースが多い
  • 後遺症が残るリスクが高まる
  • 事故との因果関係が証明できなくなる

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1.数日後に症状が出現・悪化するケースが多い

むちうちの症状は、事故直後よりも数日経ってから悪化するケースが多くみられます。事故の瞬間は興奮状態にあり痛みを感じにくいですが、翌日以降に強い痛みへと変わるケースがよくあるのです。

最初は軽い違和感程度だったのに、数日後には首が回らないほど痛むという例も少なくありません。この時期に無理をして体を動かし続けると、回復が遅れる原因になります。

症状の変化を注意深く観察し、早めに医療機関で診てもらうことが大切です。

4-2.後遺症が残るリスクが高まる

軽いむちうちを放置すると、痛みが慢性化し、後遺症として残るリスクが高まります。頚部の無理な姿勢や動作を続けると、症状が持続してしまうでしょう。

初期のうちに適切な治療を受けていれば改善できた症状でも、時間が経ち慢性化すると、治療の効果が出にくくなる場合があります。

将来的な後悔を避けるためにも、早期の受診と治療が欠かせません。

4-3.事故との因果関係が証明できなくなる

むちうちの症状を放置していると、あとになって事故との因果関係を証明できなくなる恐れがあります。医学的には、受傷から72時間以内に症状が現れるケースが多いとされているため、それ以降にはじめて痛みを訴えても、保険会社から事故によるものではないと疑われる可能性があるのです。

病院を受診せずにいると、画像検査や診療記録も残らず、症状の存在自体を客観的に示す証拠がなくなってしまいます。正当な治療費や慰謝料を受け取るためにも、軽い症状のうちから記録を残しておくことが重要です。

5.軽いむちうち(外傷性頚部症候群)の通院は整形外科がおすすめ

軽いむちうちの通院先は、整骨院ではなく整形外科を選ぶのがおすすめです。

整形外科であれば、レントゲンやMRIといった画像検査を受けられ、椎間板ヘルニアの有無や神経根の圧迫を客観的に確認できます。医師による診断書は、後遺障害の認定や慰謝料の請求など、法的な手続きにおいて重要な証拠です。

一方、整骨院や接骨院では画像検査や診断ができないため、症状の原因を正確に見極めにくいです。まずは整形外科で適切な診断を受け、そのうえで治療方針を決めていきましょう。

5-1.整形外科と整骨院の併用も可能

整形外科への通院を続けながら、整骨院を併用して通院することも可能です。

整骨院では、手技や電気治療、ストレッチなどによって筋肉の緊張をほぐし、血行を促す施術を受けられます。

ただし、整形外科と整骨院を併用する場合は、必ず事前に整形外科の主治医へ相談し、許可を得てからにしてください。医師の許可を得ずに整骨院へ通うと、保険会社が施術の必要性を認めず、費用が自己負担になってしまう可能性があり注意が必要です。

整形外科での診断を軸に、整骨院はあくまで補助的な位置づけとして活用しましょう。

ただし、整骨院でどのような施術がされているのか整形外科の医師が明確に把握しているケースはごくまれであるため、整形外科の医師に同意が得られるケースはかなり少ないという点は意識しておきましょう。

関連記事:交通事故で整形外科と整骨院は併用できない?損をしないための正しい通院手順を解説

6.軽いむちうち(外傷性頚部症候群)の治療期間

軽いむちうちの治療期間は、症状の程度によって異なります。多くのむちうちの症状は3ヵ月までに症状が改善するといわれています。しかし、これはあくまで一般的な目安であり、症状の程度によっては治療が長期間に及ぶケースも少なくありません。

治療期間はあくまで目安であり、医学的に明確な基準が決まっているわけではありません。自己判断で通院をやめず、医師の指示に従って治療を続けるようにしてください。

関連記事:むちうちの治療期間はどの程度?治療期間が慰謝料に与える影響を解説

7.軽いむちうち(外傷性頚部症候群)の症状が長引く場合の対応

軽いむちうちであっても、治療を続けて症状が長引く場合は、後遺障害等級認定の申請を検討する必要があります。

治療を尽くしてもなお、痛みやしびれといったむちうち症状が残ってしまうことは珍しくありません。そのような場合、症状固定と診断されたあとに、後遺障害として認定を受けると、そのぶんの補償を正当に受け取れる可能性があるのです。

ここからは、後遺障害等級認定の申請方法や流れ、認定結果に納得できない場合の対応について解説します。一つずつ確認していきましょう。

7-1.後遺障害等級認定の申請をおこなう

軽いむちうちの症状が長引く場合は、主治医から症状固定の診断を受けたうえで、後遺障害等級認定の申請をおこないましょう。

症状固定とは、これ以上治療を続けても回復が見込めないと医学的に判断された状態のことです。むちうちで多く認定されるのは、14級9号と12級13号という等級であり、画像所見の有無や症状の一貫性などによって、どちらに該当するかが決まります。

申請には専門的な知識が必要になるため、交通事故に詳しい弁護士に相談しながら進めるのがおすすめです。

7-2.後遺障害等級認定の申請の流れ

後遺障害等級認定の申請方法には、事前認定と被害者請求という2つの流れがあります。

事前認定は、加害者側の任意保険会社に手続きの大半を任せる方法で、被害者は後遺障害診断書を提出するだけで済み、手間がかかりません。

一方、被害者請求は、被害者自身が必要な書類をすべて集めて自賠責保険に提出する方法です。手間はかかるものの、自分に有利な資料を追加できるため、適切な等級認定を受けられる可能性が高まります。

軽いむちうちの場合は、被害者請求を選ぶのが望ましいでしょう。

7-3.結果に納得できなければ異議申し立てが可能

後遺障害等級認定の結果に納得できない場合は、異議申し立てという手続きを利用できます。

異議申し立てとは、認定した機関に対して再評価を求める手続きのことです。最初の申請時よりも詳しい医学的な証拠を新たに提出し、症状の存在や事故との関係を客観的に示す必要があります。

異議申し立ての手続きには期限が設けられているため、結果に疑問を感じたら早めに動き出すようにしましょう。手続きが複雑で不安な場合は、一人で悩まず弁護士へ相談することをおすすめします。

8.まとめ

この記事では、むちうちの症状や原因、軽い場合にあらわれる症状の特徴について解説してきました。

むちうち症状が軽いと感じても自己判断で放置せず、必ず整形外科で適切な診断を受けるようにしてください。治療を怠ると、症状の悪化や後遺症のリスクが高まるだけでなく、事故との因果関係が証明できなくなる可能性があるためです。

また、治療を続けてもむちうち症状が長引く場合は、後遺障害等級認定の申請も検討しましょう。不安なことがあれば一人で抱え込まず、早めに医師や弁護士へ相談することをおすすめします。

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白井康裕

このコラムの著者

白井 康裕

【経歴・資格】
・日本専門医機構認定 整形外科専門医
・日本職業災害医学会認定 労災補償指導医
・日本リハビリテーション医学会 認定臨床医
・身体障害者福祉法 指定医
・医学博士
・日本整形外科学会 認定リウマチ医
・日本整形外科学会 認定スポーツ医

2005年 名古屋市立大学医学部卒業。
合同会社ホワイトメディカルコンサルティング 代表社員。
医療鑑定・医療コンサルティング会社である合同会社ホワイトメディカルコンサルティングを運営して弁護士の医学的な業務をサポートしている。

【専門分野】
整形外科領域の画像診断、小児整形外科、下肢関節疾患