交通事故で整骨院はだめ?その理由と損をしないための正しい通院ルール

「交通事故の治療で整骨院に通いたいけれど、保険会社からだめと言われた」「接骨院だけに通うと慰謝料が減るって本当?」そんな不安を抱えていませんか。交通事故後のむちうちなどのケガにおいて、整骨院での施術は心強い味方ですが、実は通い方を間違えると治療費が自己負担になったり、正当な慰謝料を受け取れなくなったりするリスクがあります。

そこでこの記事では、以下の内容を解説していきます。

  • 交通事故治療で整骨院(接骨院)への通院がだめとされる具体的な理由
  • 整骨院(接骨院)に通う場合は整形外科との併用が最適なのはなぜか
  • 交通事故治療で整骨院(接骨院)を利用するメリット
  • 保険会社から「整骨院(接骨院)への通院は認められない」と言われたときの対処法
  • 整骨院(接骨院)に通いながら正当な額の慰謝料を受け取るためのポイント4選

この記事を読むことで、体の回復を最優先しながら、法的な権利もしっかりと守るための正しい通院ルールが明確になります。納得のいく解決を目指すために、ぜひ最後までご覧ください。

1.そもそも整骨院(接骨院)とは?

そもそも整骨院とはどのような場所なのでしょうか。整骨院の役割を正しく知ることは、納得のいく治療を受けるための大切な第一歩です。

まずは、整骨院の基本的な知識と、整形外科とは何が違うのかを分かりやすく解説します。

1-1.整骨院とは

整骨院とは、柔道整復師という国家資格を持つ専門家が、骨や筋肉のトラブルに対して施術をおこなう施設で、医療機関には該当しません。それゆえ、医療行為はおこなうことはできませんが、事業所として医業類似行為をおこなっています。

主な施術対象は、スポーツや交通事故による打撲・捻挫・脱臼・骨折等の外傷を扱います。脱臼・骨折に対して施術をおこなう場合、応急処置の場合を除き、「医師の同意」が必要です。 

整骨院では薬の処方や注射といった医療行為はできませんが、マッサージや物理療法などが可能です。負傷原因がはっきりしている場合に、健康保険などを用いた施術を受けられます。

施術は国家試験に合格した専門家が対応するため、安心して相談できるのが特徴です。

1-2.整骨院と整形外科の違い

整形外科と整骨院の決定的な違いは、医師が医学的な「診断」をおこなえるかどうかです。整形外科には医師がいて、レントゲンやMRIを用いた精密な検査をおこなえます。

それに対して整骨院は柔道整復師が施術をおこなう場所であり、医学的な診断をくだす権限はありません。とくに、痛み止めの薬を出したり、注射を打ったりする治療行為は整形外科でしかおこなえないのがルールです。

交通事故のケガを根本から治すためには、まず整形外科で骨の異常がないか検査し、その結果をもとに適切な処置を選択することが重要です。

2.交通事故治療で整骨院(接骨院)への通院がだめとされる6つの理由

交通事故の治療で整骨院への通院が「だめ」といわれるのは、以下のような理由が関係しています。

  • 整骨院では医療行為ができない
  • 医師の診断がないと保険上の根拠が弱くなる
  • 保険会社が治療費の支払いを渋りやすい
  • 後遺障害等級認定で不利になりやすい
  • 事故との因果関係を否定されやすい
  • 保険会社がトラブル回避のために止める場合がある

なぜ整骨院通いが問題視されやすいのか、詳しく解説します。

2-1.整骨院では医療行為ができない

整骨院では医師の診察や診断ができないため、診断書を作れません。交通事故の賠償は基本的に医師が作成した診断書や診療記録をもとに計算されます。そのため、整骨院だけに通い続けると、治療の必要性やケガの程度を裏づける資料が不足し、補償の判断で不利になる可能性が高いです。

また、整骨院の施術を担当する柔道整復師は国家資格を持つ専門職ですが、医師ではないため病名を診断したりする医療行為は行えません。結果として、痛みがあって施術を受けていたとしても「その症状が交通事故によるもの」と客観的に証明しにくくなる点に注意が必要です。

2-2.医師の診断がないと保険上の根拠が弱くなる

医師による診断書がないと、保険会社に対して治療の必要性を説明する根拠が非常に弱くなります。

交通事故の保険金は、医師が認めた「医学的妥当性」がある場合に支払われるのが原則です。医師の診察を受けずに整骨院だけに通うと、その施術が本当に必要だったのかを客観的に示せません。保険会社から「それは単なるリラクゼーションではないか」と疑われる原因になるのです。

適切な補償を受けるためには、必ず医療機関にて医師の診断を仰ぐ必要があります。

2-3.保険会社が治療費の支払いを渋りやすい

保険会社は医学的な根拠がない施術に対して、治療費の支払いを拒否したり早期に打ち切ったりする傾向があります。

整骨院の施術費は整形外科の治療費と比べて高額になるケースも少なくありません。とくに医師の同意がないまま整骨院に通い続けると、保険会社は支払いをおこなう義務がないと主張されやすいです。

無用なトラブルを避けるためにも、事前に保険会社へ連絡を入れておくのが賢明です。

2-4.後遺障害等級認定で不利になりやすい

治療を続けてもしびれなどが残った場合、整骨院中心の通院では後遺障害の認定を受けることが非常に困難です。

後遺障害の審査では、医師が作成する「後遺障害診断書」が必須の書類です。整骨院の場合は診断をするという医療行為を行えないため、この書類を作成できません。

また、定期的な医師の診察や検査データがないと、症状の経過を医学的に証明するのは不可能です。とくに14級などの神経症状を立証する際は、診療録や診断書の神経症状の記載が決定的な意味を持ちます。

関連記事:しびれで後遺障害14級の認定を受けるためのポイント6選

2-5.事故との因果関係を否定されやすい

整形外科での継続的な受診がないと、今の痛みが本当に事故によって生じたものなのかという因果関係を否定されやすくなります。医師による定期的な経過観察がない期間があると、その間に別の原因で痛めたのではないかと疑われるためです。

たとえば、事故から時間が経過してから整骨院に行き始めても、事故との結びつきを証明するのは至難の業です。医学的な観点から事故直後からの症状の変化を診療録や診断書に残せるのは医師だけであり、証拠が不十分だと、慰謝料を一切受け取れない恐れもあります。

2-6.保険会社がトラブル回避のために止める場合がある

保険会社は将来的な示談交渉でのトラブルを避けるために、最初から整骨院への通院を控えるようにアドバイスする場合があります。これは被害者があとから「治療費が払われない」「慰謝料が少なすぎる」と困るのを未然に防ぐ目的もあります。

保険会社は過去の膨大な事例をもとに、どのような通院方法が問題になりやすいかを熟知しています。もちろんコスト削減の意図も含まれますが、法的なリスクを教えてくれている側面もあるのです。

3.整骨院(接骨院)に通うなら整形外科との併用が最適解

交通事故の治療で整骨院を利用する際は、整形外科との併用が最も望ましい選択肢です。併用が最適な理由や、併用する際の流れを解説します。

  • 交通事故治療で整骨院だけに通うのはNG
  • 先に整形外科を受診し、必ず医師の診断を受ける
  • 医師から整骨院通院の同意を得る
  • 整骨院へは施術を目的として通院する

詳しくみていきましょう。

3-1.交通事故治療で整骨院だけに通うのはNG

交通事故の被害にあって整骨院だけに通い続けるのは、絶対に避けてください。

医師による定期的な診察がないと、ケガが事故によるものだと証明できなくなってしまいます。後遺障害の申請をおこなう際も、医師の診断書がないと手続きが進められません。よって、保険会社から治療費の支払いを一方的に打ち切られるリスクも高まります。

必ず医療機関の先生に診てもらいながら、補助的に整骨院を利用するのが、体と補償の両方を守る最善の方法です。

3-2.先に整形外科を受診し、必ず医師の診断を受ける

事故にあった直後は何を差し置いても、まずは整形外科を受診して医師の診断を受けてください。レントゲンやMRIによる精密検査をおこない、医学的な根拠をカルテに残すことが重要です。

痛みが軽いと感じても、数日後から症状が悪化するケースは少なくありません。そのためまずは診断書を作成してもらうことが、警察への届け出や保険の手続きをおこなううえで必須となります。

3-3.医師から整骨院通院の同意を得る

整骨院への通院を検討しているなら、事前に整形外科の主治医から必ず同意を得るようにしてください。医師の許可を得ないまま通院を始めると、保険会社から治療費を支払ってもらえない恐れがあるからです。

医療機関との連携がスムーズな整骨院を選ぶと、保険会社とのトラブルを未然に防ぎ、治療に専念できる環境が整います。医師に「リハビリとして整骨院を併用したい」と相談し、承諾をもらうようにしましょう。

ただし、整骨院でどのような施術がされているのか整形外科の医師が明確に把握しているケースはごくまれです。整形外科の医師に同意が得られるケースはかなり少ないという点は意識しておきましょう。

3-4.整骨院へは施術を目的として通院する

整骨院に通う目的は、あくまで体の機能を回復させるためのリハビリの代替としての施術に絞るべきです。

電気療法や手技による施術は、むちうち(外傷性頚部症候群)に効果がある可能性はあります。整形外科での治療と並行して利用する選択肢はあるでしょう。

一方で、整骨院での施術をメインにしてしまうと、医学的な経過管理がおこなえなくなるため注意が必要です。病院にも通院しながら、上手に活用しましょう。

※「むちうち」という言葉について
「むちうち」という言葉は正式な病名ではなく、あくまで一般的な呼び名(俗語)です。
医療機関における正式な診断名は、「外傷性頚部症候群」となります。

4.交通事故治療で整骨院(接骨院)を利用するメリット

適切な手順を守って整骨院を利用すれば、交通事故のケガに対して以下のようなメリットを得られます。

  • ケガに対する施術を受けられる
  • 通院の融通が利きやすい

整骨院の正しい活用方法を理解して利用すると、生活の質を守る助けとなります。それぞれ解説していきます。

4-1.ケガに対する施術を受けられる

整骨院では柔道整復師という国家資格を持った専門家による、施術を受けられます。整骨院での施術は、脱臼・骨折以外の交通事故のケガに効果がある可能性があります。

整骨院で施術を受けることで、痛みが改善する可能性があるのです。 

4-2.通院の融通が利きやすい

整骨院は整形外科に比べて診療時間が長く、予約の融通が利きやすいのが大きな利点です。仕事帰りでも立ち寄れる夜遅い時間まで受け付けている場所が多く、通院を継続しやすい環境が整っているためです。

また、予約制を採用している院も多いため、忙しい毎日の中でも待ち時間を最小限に抑えられるでしょう。

5.保険会社から「整骨院(接骨院)への通院は認められない」と言われたときの対処法

保険会社から整骨院への通院を認められないと言われたら、まずは主治医の先生に相談してください。医師が「整骨院でのリハビリが必要」と判断しているなら、保険会社はその指示を簡単には拒否できないからです。

その後、保険会社に対して医師の許可を得ている事実を明確に伝え、必要であれば意見書などを作成してもらいましょう。それでも交渉がうまくいかない場合は、交通事故に強い弁護士を頼るのが確実です。

関連記事:保険会社が交通事故の整骨院通院を認めない理由とは?許可を得る方法や対処法

6.整骨院(接骨院)に通いながら正当な額の慰謝料を受け取るための流れとポイント

整骨院に通いつつ正当な慰謝料を受け取るために、交通事故にあってから以下の流れで治療や対応を進めるようにしてください。

  1. 交通事故にあったらまずは医療機関である整形外科を受診する
  2. 診断書を発行してもらう
  3. 整骨院を利用する際は「医師の同意」を得る
  4. 専門家へ相談する

これらの内容を実践して、安心してリハビリに専念できる環境を整えてください。

6-1.交通事故にあったらまずは医療機関である整形外科を受診する

交通事故にあった場合は、できるだけ早く医療機関である整形外科を受診するのが鉄則です。受診までの期間が空きすぎると、そのケガが事故によるものだと認めてもらえなくなる恐れがあるからです。

むちうち(外傷性頚部症候群)の場合はたとえ当日に痛みがなくても、数時間から数日後に症状が出るケースは珍しくありません。早めに医師の診察を受けて、事故との関係をはっきりさせましょう。

6-1-1.事故直後の検査結果が慰謝料の根拠になる

医療機関でおこなうレントゲンやMRIなどの検査は、ケガの存在の法的な証拠になります。医師による客観的なデータとしての記録が、正当な補償を受けるうえで欠かせないからです。

整骨院の施術だけでは、ケガの状態を客観的に証明するのが難しく、保険会社への説得力が足りません。医療機関での検査結果があるからこそ、治療の必要性が認められます。

6-1-2.痛みやしびれなどの自覚症状を主治医に漏れなく伝える

医師の診察を受けるときは、痛みやしびれといった自覚症状をすべて正確に伝えることが重要です。

症状に伝え漏れがありカルテに記載されていないと、あとから後遺障害として認めてもらうのが極めて難しくなります。強く感じる症状以外でも、漏れなく伝えるようにしてください。

関連記事:【むちうちの症状の伝え方】重要性やポイント・注意点

6-1-3.治療のスタートを遅らせない

交通事故によるケガの治療は、一日でも早く開始しましょう。治療を始めるのが遅れると、ケガが軽かったと判断されて、慰謝料の額が減らされる可能性があるからです。

痛みを放置すると治療が後手にまわるだけでなく、事故との因果関係を疑われる原因にもなります。早期に適切な治療を受けることで、体の回復が早まるだけでなく、治療の必要性も明確に示せるでしょう。

6-2.診断後は必ず診断書を発行してもらう

医療機関で診察を受けたあとは、必ず医師に診断書を作成してもらいましょう。

診断書は、あなたが交通事故でケガを負った事実を証明する公的な書類です。この書類があることで、交通事故が「人身事故」として扱われ、保険の手続きが正式にスタートします。

診断書がないと、ただの物件事故として処理されてしまい、適切な慰謝料を請求できなくなる恐れがあり注意が必要です。

6-3.整骨院を利用する際は「医師の同意」を得る

整骨院への通院を開始する場合は、整形外科の主治医からの同意を必ず得るようにしてください。医師の許可なく自分勝手に整骨院へ通うと、保険会社が施術費の支払いを拒否するケースがあるからです。

また、整骨院に通院する際は、以下で解説する2点を意識してください。

6-3-1.整形外科医の許可や連携を確認し、治療の必要性を守る

医師の許可を得たあとも、整形外科への定期的な通院を継続し、整形外科と整骨院の連携を確認することが不可欠です。

整骨院だけに通っていては、医師が症状の経過を確認できず、治療の必要性を守れなくなります。定期的に整形外科を受診して、診察を継続するようにしてください。

医師が体の変化を把握し続けると、治療の継続が認められやすくなります。

6-3-2.交通事故治療の実績が豊富で、医療機関や保険会社との連携がスムーズな整骨院を選ぶ

通院する整骨院を選ぶときは、交通事故の対応に慣れている施設を探しましょう。実績が豊富な整骨院であれば、医療機関との連携や保険会社への対応を熟知しているためです。

手続きの流れを理解している整骨院であれば、書類の作成や連絡もスムーズにおこなってくれます。一方で経験が少ない院だと、保険会社とのトラブルを招き、治療に集中できなくなるかもしれません。

安心して任せられる場所を見つけるのが、適切な施術を受けながら納得のいく解決を迎えるための大切な要素となります。

6-4.専門家へ相談する

保険会社との交渉や手続きで不安を感じたら、早めに弁護士などの専門家へ相談してください。自分一人で対応するよりも、専門的な知識を持ったプロに任せるのが最も確実な解決策です。

弁護士へ依頼すると、保険会社とのやり取りをすべて代行してもらえるため、精神的な負担が大幅に減ります。また、慰謝料の基準が上がるケースも多いため、最終的に受け取れる金額が増える可能性も高いです。

7.【弁護士の先生方へ】整骨院への通院状況にご注意ください

交通事故にあわれた依頼者が整骨院に通院する際は、整形外科の受診が疎かにならないようご指導をお願いいたします。定期的な医師の診察がないと、医学的な因果関係の立証が困難になり、非該当などの結果を招く恐れがあり注意が必要です。

弊社では、画像検査で異常がないとされる場合でも、医学的知見をもとにサポートいたします。医学意見書の作成を通じて、確かな証拠を提示するお手伝いをおこなうのが弊社の役割です。先生方の立証活動を医学の力で支え、適切な解決へと導きます。

交通事故の案件にお困りの際は、ぜひ弊社までご相談ください。

※弊社は弁護士の先生からのお問い合わせに対してのみ、サービスを承っております。そのため事故の被害にあわれた当事者の方は、必ず代理人弁護士の先生を通してご連絡頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。

8.まとめ

交通事故の治療において、整骨院は治療の選択肢となりますが、あくまで「整形外科での医師の診断」がすべてのベースとなります。医師の同意がないまま整骨院のみに通い続けると、事故との因果関係が疑われ、治療費の打ち切りや慰謝料の減額を招く恐れがあるため注意が必要です。

もし保険会社との交渉や通院方法に迷った際は、一人で悩まずに弁護士などの専門家へ相談しましょう。正しい知識を武器に、後悔のない治療と補償を実現させてください。

合同会社ホワイトメディカルコンサルティングでは、後遺障害認定の被害者請求時に有効な証拠となる医学意見書の作成をおこなっております。

後遺障害を抱え医学意見書が必要な状況にある方は、是非弊社にご依頼ください。

白井康裕

このコラムの著者

白井 康裕

【経歴・資格】
・日本専門医機構認定 整形外科専門医
・日本職業災害医学会認定 労災補償指導医
・日本リハビリテーション医学会 認定臨床医
・身体障害者福祉法 指定医
・医学博士
・日本整形外科学会 認定リウマチ医
・日本整形外科学会 認定スポーツ医

2005年 名古屋市立大学医学部卒業。
合同会社ホワイトメディカルコンサルティング 代表社員。
医療鑑定・医療コンサルティング会社である合同会社ホワイトメディカルコンサルティングを運営して弁護士の医学的な業務をサポートしている。

【専門分野】
整形外科領域の画像診断、小児整形外科、下肢関節疾患