【むちうちの症状の伝え方】重要性やポイント・注意点
「むちうちの症状をどうやって伝えればいいかわからない」「むちうちの症状を伝えるときの注意事項はある?」と疑問に思っていませんか?
むちうちで代表的なものは首の痛みですが、実際にはそれ以外にも多種多様な症状があります。そのため、適切な治療を受けるためにも、医師に対するむちうち症状の伝え方は非常に重要性が高いのです。
そこでこの記事では、整形外科専門医が以下の内容を解説しています。
- むちうちにみられる症状
- 医師に対するむちうちの症状の伝え方は重要性が高い
- 医師に対するむちうちの症状の伝え方【ポイント5選】
- 医師にむちうちの症状を伝えるときの4つの注意点
記事の後半では、むちうちの症状がうまく伝わらないときの対処法も解説しています。むちうちの症状があり、どのように伝えるべきか検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
1.むちうちにみられる症状
むちうちは、以下のような症状がみられるのが特徴です。
- 首の痛み
- 肩の痛み
- 頭痛
- 四肢のしびれ
- めまい、耳鳴り
むちうち(外傷性頚部症候群)の病態の基本は外力による頚椎領域の軟部組織損傷であるとされています。この頚椎領域の軟部組織損傷により、むちうちの症状が発症するとされていますが、発症する症状は非常に多様なのです。
症状の出方や強さには個人差があり、受傷当日よりも受傷後翌日から数日後に症状が出現することも多いとされています。
外傷性頚部症候群(むちうち)では、どのような症状が出現するのか、詳しく解説していきましょう。
1-1.首の痛み
むちうち(外傷性頚部症候群)で最も多くみられる代表的な症状が、首の痛みです。交通事故による外力で、頚椎の筋群、椎間板、椎間関節、後根神経節、椎骨動脈、交感神経系などに傷害が引き起こされうるため痛みが発生するとされています。
首の痛みは慢性化することもあります。慢性化の病態はまだ医学的に詳細には解明されていません。椎間関節滑膜炎の遷延化、頚神経根後枝の刺激症状などの原因が考えられています。
1-2.肩の痛み
むちうちの症状(外傷性頚部症候群)の症状として、肩の痛み(肩甲帯の痛み)も多くみられます。傷などの筋肉への過負荷により微小損傷を受けた筋・筋膜組織が拘縮状態となり痛みを発生する筋筋膜性疹痛症候群との関連が指摘されています。
むちうちの症状(外傷性頚部症候群)の痛みの発生部位は頚部正中、傍脊柱部から肩甲帯、後頭頚椎移行部と多彩なのです。
1-3.頭痛
むちうち(外傷性頚部症候群)によって、頭痛が引き起こされることも珍しくありません。頭痛の機序として、上位頚椎神経根(C2神経根)の圧迫や炎症や神経根への痛み刺激が吻合を介して三叉神経第1枝領域の痛みとして出現すること、上位頚椎神経脊髄路核は上位神経根の刺激を三叉神経領域の疼痛と感じることがあること、頚筋の緊張やスパズムによって頭部筋群も収縮しして緊張性頭痛が生じることなどが考えられています。
1-4.四肢のしびれ
むちうちの症状として、四肢のしびれがあらわれる場合があります。神経根症状や脊髄症状として四肢のしびれや筋力低下を認めることがあります。むちうち(外傷性頚部症候群)ではMRI画像所見の異常がないにもかかわらず、四肢のしびれが生じることが多いとされています。
1-5.めまい・耳鳴り
むちうちによって、めまいが起こることもあります。頚椎由来のものは頚性めまいと総称されます。回転性めまい(ぐるぐる回るめまい)と浮遊性めまい(ふわふわとしためまい)とがあります。耳鳴りもむちうち(外傷性頚部症候群)の1割弱に発症すると言われています。
めまいや耳鳴りの原因としては頚部の椎骨動脈循環不全、頚部交感神経障害(バレー・リュー症候群)、椎間関節の固有感覚受容器部軟部組織の緊張充進、内耳のゆさぶり、耳石の損傷など様々な説が提唱されています。
2.医師に対するむちうちの症状の伝え方は重要性が高い
病院を受診し医師にむちうちの症状を伝えることは、以下のような理由から非常に重要性が高いです。
- むちうちの症状が多種多様なため
- 正確な診断を受けるため
- むちうちの適切な治療を受けるため
- 症状固定を適切に判断してもらうため
- むちうちによる適切な後遺障害等級の認定を受けるため
詳しく解説していきます。
2-1.むちうちの症状が多種多様なため
むちうち(外傷性頚部症候群)の症状は、首の痛みだけでなく、肩や頭の痛み、四肢のしびれ、めまい、耳鳴りしなど非常に多種多様です。これらの症状は、ご本人にしか分からない自覚症状が中心となる場合も少なくありません。
画像検査などでは異常が見つかないのがむちうちの特徴の一つなので、患者さんからの具体的な自覚症状の訴えが、医師にとって診断の大きな手がかりとなります。多岐にわたる症状を的確に伝えることで、外傷性頚部症候群の症状を把握してもらいやすくなります。
2-2.正確な診断を受けるため
医師にむちうち(外傷性頚部症候群)の症状をきちんと伝えることは、正確な診断を受けるために不可欠です。医師は、患者さんから伝えられた症状の詳しい内容や、事故の状況、症状の経過などを総合的に判断して診断をおこないます。
むちうちに関連する症状が一貫して持続していることで、医師は外傷性頚部症候群の診断を正確に判断しやすくなるのです。
あいまいな伝え方であったり、症状に一貫性が無くコロコロ変わる場合は、詐病を疑われたりして、適切な診断名がつかなかったりする可能性も出てきます。
2-3.むちうちの適切な治療を受けるため
むちうちの適切な治療を受けるためには、医師によりただしくむちうち(外傷性頚部症候群)と正しく診断してもらうことが重要です。
治療法は、患者さんの状態や希望によって異なってきます。たとえば、受傷後1週間以内といった急性期で痛みが強い時期にはネックカラーでの局所安静や薬物療法が中心となり、それ以降で症状が落ち着いてきたら物理療法・リハビリテーションをおこなうなど、段階に応じた治療が選択されます。
症状の些細な変化や、日常生活で困っている点を具体的に伝えることで、医師は治療方針をより適切に調整し、効果的な治療計画を立てられるのです。
2-4.症状固定を適切に判断してもらうため
医師に症状の経過を正確に伝え続けるのは、適切なタイミングで「症状固定」の判断をしてもらうためにも大切です。
症状固定とは、わかりやすく言えば治療を続けてもそれ以上症状の改善が見込めないと医学的に判断される状態を指します。この判断は、今後の治療方針や、後遺障害等級認定の申請手続きに進むかどうかの重要な分岐点となります。
日々の症状の変化や依然として残っている症状などを具体的に医師に伝え続けることで、医師はより実態に即した症状固定の判断がしやすくなります。
関連記事:症状固定は誰が決めるの?保険会社から症状固定といわれたらどうする?
2-5.むちうちによる適切な後遺障害等級の認定を受けるため
むちうち(外傷性頚部症候群)による適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、事故当初から一貫して具体的な症状を医師に伝え、カルテや診断書に記録してもらうことが極めて重要です。
後遺障害等級の認定は、原則として医師が作成する後遺障害診断書や、それまでの治療経過の記録をもとにおこなわれます。そのため、どのような症状がいつから出現し、どのように推移し、最終的にどのような状態で残存しているのかを、客観的な記録として残しておく必要があります。
口頭で伝えただけでは記録に残らない場合もあるため、重要な症状は明確に一貫性をもって伝え、診療録への記録を医師へやんわりとお願いするくらいの意識が大切です。
関連記事:後遺障害が認定されない理由とは?認定されなかったときの対処法も解説
3.医師に対するむちうちの症状の伝え方【ポイント3選】
医師にむちうちの症状を伝えるときは、以下の5つを意識してください。
- いつからどのような症状が出たのか正確に伝える
- 症状を誇張せずに伝える
- 症状をメモに残しておき医師に渡す
それぞれ解説していきます。
3-1.いつからどの部位にどのような症状が出たのか正確に伝える
医師にむちうち(外傷性頚部症候群)の症状を伝える際は、事故直後からあったのか、事故後数日しておこったのかを発症時期を正確に伝えましょう。むち打ちの場合は事故後数字して遅れて頚部痛などの症状が出てくる場合もありますので、2〜3日以内であれば事故によるむちうちの症状として医学的には矛盾しません。
症状の出現場所や出現時期は、医師がむちうち(外傷性頚部症候群)の診断をするための大切な情報源となります。
たとえば、「事故当日は何もなかったが、翌朝起きたら首が痛くなっていた」とか、「事故直後から軽い頭痛があり、3日後からめまいもするようになった」というように具体的に話すことがポイントです。
症状が辛いのはよくわかるのですが、症状の発症時期や発症部位を冷静に具体的に医師に正確に伝えるようにしましょう。
3-2.症状を誇張せずに伝える
医師にむちうちの症状を伝える際は、ありのままの状態を正直に、誇張せずに伝えることが基本です。早く治したい、つらさを理解してほしいという気持ちから、つい症状を大げさに話してしまうと、かえって医師の印象を悪くして良好な医師・患者関係が築けない可能性があります。
また、賠償問題などを意識して不必要に症状を強調すると、医師との信頼関係が損なわれたり、後の手続きで不利になったりすることも考えられます。現在のつらい状況を正確に理解してもらうためには、客観的かつ正直な伝え方が最も重要です。
3-3.症状をメモに残しておき医師に渡す
日々の症状の変化や気づいたことは、積極的にメモに残しておきましょう。
医師の診察の短い時間だけではすべてを正確に要領よく思い出して伝えるのは難しい場合があります。いつ、どの部位に、どのような症状が出たか、薬の効果があったかなどを記録しておくと、医師は症状の内容や経過の要点を把握しやすくなります。
医師に自分の症状を容易に正しく理解してもらうために、要点を絞ってメモを作成しておきましょう。
4.医師にむちうちの症状を伝えるときの4つの注意点
医師にむちうち(外傷性頚部症候群)の症状を伝えるときは、以下の4点に注意してください。
- 医師とのコミュニケーションを大切にする
- 症状の説明には一貫性を持つ
- 症状に関係のない愚痴は控える
- 整骨院や鍼灸院への通院は医師の許可を得る
詳しく解説していきます。
4-1.医師とのコミュニケーションを大切にする
医師にむちうち(外傷性頚部症候群)の症状を伝える際は、一方的に話すだけでなく、医師とのコミュニケーションを大切にしてください。医師からの質問には正直かつ具体的に答え、分からないことや不安な点があれば遠慮なく質問しましょう。
治療は医師と患者さんが協力しておこなうものですから、良好な関係を築くことが大切です。疑問点を解消し、納得して治療に臨むことで、治療効果も高まる可能性があります。
挨拶や感謝の言葉を伝えるといった基本的なことも、円滑なコミュニケーションの助けとなります。
4-2.症状の説明には一貫性を持つ
むちうち(外傷性頚部症候群)の症状を医師に説明する際には、必ず一貫性を持たせましょう。診察のたびに症状の説明が大きく変わったり、以前と矛盾するような内容を話したりすると、医師に不信感を持たれてしまう可能性があるためです。
もちろん、症状は日々変化するものですが、基本的な痛みの部位や種類、日常生活での支障などについては、できるだけ正直に同じように伝えることを心がけましょう。
医師に何を伝えたかをメモに残しておくと、一貫性を保ちやすくなります。
4-3.症状に関係のない愚痴は控える
医師にむちうちの症状を伝える場面では、症状とは直接関係のない個人的な愚痴や不満などを長々と話すことは控えるのが賢明です。
診察時間は限られており、医師は多くの患者さんを診察しなければなりません。症状に関係のない話に時間を割いてしまうと、本当に伝えるべき重要な症状の情報が十分に伝えられなかったり、医師が診断に必要な情報を聞き出す時間がなくなったりする可能性があります。
つらい気持ちは理解できますが、診察の場では症状を伝えることに集中しましょう。
4-4.整骨院や鍼灸院への通院は医師の許可を得る
もし整形外科などの医師の治療と並行して、整骨院や鍼灸院にも通院したいと考える場合は、必ず事前に医師に相談し、許可や指示を得てください。整形外科の医師はほとんどの場合は整骨院や鍼灸院への通院を許可しませんが、例外的に診療時間内での病院・クリニックでのリハビリに通院できない場合に許可が得られる場合もあります。
交通事故の治療の場合、医師の許可なく他の施術所に通院すると、その費用が保険で認められないケースもあります。
自己判断せず、まずは主治医とよく話し合い、連携を取りながら治療を進めてください。
5.むちうちの症状を伝えても医師との連携が取れないときの対処法
むちうちの症状がうまく伝わらない、症状を伝えても医師との連携がうまくとれないときは、以下2つの対処法を実践してください。
- 転院を検討する
- 弁護士への相談を検討する
一つずつ解説していきます。
5-1.転院を検討する
医師とのコミュニケーションがうまくいかず、治療に対する不安や不信感が解消されない場合には、ほかの医療機関への転院を検討するのも一つの有効な手段です。
医師にも専門分野や治療方針、患者さんとの相性があります。そのため病院を変えることで、より自分に合った治療や説明を受けられる可能性があるのです。また、整形外科クリニックでも交通事故の患者の診療に慣れたところと、慣れていないところがあるのは事実なのです。
転院する際には、現在の症状が交通事故を起因としていることの証明として、可能であれば紹介状を書いてもらうとスムーズです。
また、交通事故の治療で保険会社に対応してもらっている場合は、事前に保険会社に転院の意向を伝えておくのが望ましいでしょう。
5-2.弁護士への相談を検討する
むちうち(外傷性頚部症候群)の症状の伝え方や治療方針、とくに交通事故が原因の場合の賠償問題に関する診断書の作成などで医師との連携がうまくいかず、ご自身での対応が難しいと感じる場合は、弁護士への相談を検討するのも有効な対処法です。弁護士は、法的な観点から必要なアドバイスをしてくれます。また、後遺障害等級の認定手続きなど、専門的な知識が必要な場面でもサポートを受けられます。
初回相談は無料でおこなっている弁護士事務所も多いので、一度話を聞いてみるのも良いでしょう。
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関連ページ:交通事故や医療過誤等の医学意見書作成
7.まとめ
むちうち(外傷性頚部症候群)は症状が多種多様で、適切な治療や適切な補償を受けるためにも「症状の伝え方」が非常に重要です。むち打ちの症状を伝えるときは、以下のポイントを意識してください。
- いつからどのような症状が出たのか正確に伝える
- 症状を誇張せずに伝える
- 症状をメモに残しておき医師に渡す
また症状を伝えるときは常に一貫性をもち、誇張しないよう気をつけながら医師とコミュニケーションをとりましょう。
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このコラムの著者
白井 康裕
【経歴・資格】
・日本専門医機構認定 整形外科専門医
・日本職業災害医学会認定 労災補償指導医
・日本リハビリテーション医学会 認定臨床医
・身体障害者福祉法 指定医
・医学博士
・日本整形外科学会 認定リウマチ医
・日本整形外科学会 認定スポーツ医
2005年 名古屋市立大学医学部卒業。
合同会社ホワイトメディカルコンサルティング 代表社員。
医療鑑定・医療コンサルティング会社である合同会社ホワイトメディカルコンサルティングを運営して弁護士の医学的な業務をサポートしている。
【専門分野】
整形外科領域の画像診断、小児整形外科、下肢関節疾患