交通事故の医学意見書における労働能力の喪失率と労働能力喪失期間
交通事故により骨折などを起こすと重症例では後遺障害を発症することは多くあります。
どれだけ良いタイミングで良い手術をしても外傷が重傷であればあるほど、後遺障害は残りやすくなると言うのは仕方ないことであると臨床的には感じます。
逆に言えば、重傷外傷でも後遺障害を残さないようにしよう医師の集合知が日々の医学を進歩させているとも言えるでしょう。
脊椎・脊髄や四肢に後遺障害を残すと、交通事故前の労働内容次第では、労働能力へ後遺障害が影響を与えると判断される場合は多くあります。
このような事情から、医学意見書で労働能力の喪失率と労働能力喪失期間について意見を求められるときが時にあります。
場合によっては、すでに提出された医学意見書に反論するという形で意見を求められる場合もあります。
そのような際に提出された医学意見書を見てみると。“労働能力喪失率●%、労働能力喪失期間●年”であると明記されている場合があります。
もちろん、医学意見書である以上、医師が意見していますが、よくよく読んでみると医学的な根拠がありません。
そもそも、医学的に“労働能力喪失率●%、労働能力喪失期間●年”という意見を裏付ける研究は私が知る限りないため、医学的に意見するのが難しい事項と思われます。
医学的にはたとえば頚椎の後遺障害であれば、下記の程度の意見であれば可能と考えられます。
“頚椎には頭蓋と躯幹を連結し、頭蓋を支持すると同時に脳組織に増大する情報を末梢へ伝達し、上肢や肩甲帯を支えている。
頚椎や頚髄は瞬時にして繊細な運動が要求されることもある。
したがって、頚椎の機能障害は労働能力へ影響を与える可能性がある。”
弊社では、医学的に意見することが難しい内容については、事前に意見出来ないことをお伝えさせて頂いております。
しかし、医学的に意見できる内容の範囲もできる限りお伝えさせて頂いております。
弊社では、依頼をして頂いた弁護士の先生の要望になるべく添いながらも、医学的には意見できない部分は意見しないことで医学意見書の信用性を担保しています。
ぜひ、弊社へ医学意見書のご相談を頂けますと幸いです。
このコラムの著者
白井 康裕
このコラムの著者
白井 康裕
【経歴】
平成17年 名古屋市立大学医学部卒業
その後、クリニック・中小病院から高度医療機関・大学病院まで様々な病院で勤務や研究に従事し、多数の資格を保有。
現在も複数の医療機関にて非常勤の整形外科専門医として勤務している。
【専門分野】
整形外科領域の画像診断、小児整形外科、下肢関節疾患